NEW GAME!! #10「どんどんリアリティが薄くなっていくんだよ」各々にそれぞれの事情がある。



一から作り始めたペコの制作もいよいよ佳境。定められた期日を守ることは、プロとして絶対に譲ってはいけないことだと思いますが、さりとて明らかに想定したクオリティに満たないものを世に出してしまうことも、またプロとしては絶対に避けなければいけない事態の一つ。あちらを立てればこちらが立たず。今回はそんな納期の遵守とクオリティ維持の両立の葛藤が印象深い回。
インターン中とはいえプロの制作の一端を担うツバメの言い分も分かるのです。正式採用の成否に関わる自身の評価という点を除いても、彼女の言い分はキツい物言いかもしれないけど間違ってはいない。度重なる仕様変更の末に作業が遅れに遅れ、最終的に間に合わずに全てが破綻してしまっては元も子もない。各セクションが密に連絡を取り合い、決め事を守らなければ瓦解しかねないからだ。
でも、現状で明らかに何かが足りていない。これを加えればゲームとしてのクオリティが向上し、確実にそれが改善されると確信を持てる状況下で、それを見なかったことにして妥協してしまうのも、それはそれでプロとしてあるまじき行為とされかねない。その両方の限界ギリギリを突き詰めより良い物を追い求められる。それが求められるプロの資質ではないかと思うのです。
そこへいくと今回ねねは一度は妥協しようとした。まだ時間は残されているのに不安定な動作を放置し、品質向上の為に最後まで突き詰めるという工程を疎かにしようとした。でも、ツバメからの一言で踏みとどまるんだよね。ちょっと険悪になったねねに対して助言をしてくれるツバメ。その助言を素直に聞き入れ、貪欲に意見を求めるねね。
互いにやっている今の作業は全くの別物。でもチームとして作るゲームをより良い物に。その純粋で原点たる思いはプロの必要とされる資質そのもので。確かにねねは追加要素を加えたゲームを、期日までに仕上げることは出来なかった。でもイージーモードにおいては不安定な動作を解消し、更にゲームをより良くするための要素を盛り込もうと最後まで奮闘したのです。
良い物を作りたいという気持ちは忘れずにいたい。みんな限られた時間の中で目標に近いものを作ろうとしている。うみこの台詞が今回の全てを物語っていた気もしますが、妥協することなく限界を突き詰める。プロに求められる資質を、この課題の中で見せたからこそ、ねねは彼女からの一定の評価を得て、合格を言い渡されたのだと思います。この課題においてはその姿勢こそが肝要なのだと。
実作業を通じて見えるプロに求められる資質。その過程で少しずつ互いに対する理解を深めているねねとツバメの描写もあって良いよね。既にプロに混じって作業に従事しているツバメでも失敗することがあることを、ねねは知ったし、逆に何も考えていないようで、ねねが人の意見を素直に聞き入れ、貪欲に取り込み挑戦し続ける気概を持っていることをツバメは知った。
考え方は多少違っていても、皆より良いゲームを作りたい。それぞれの事情から時に衝突することはあっても、大元にあるその思いは共通している。だからゲーム作りに対するプロの資質を持つ者同士であれば、きっと最後には通じ合える。納期と品質。ギリギリを突き詰める両立の中に、複数の大切なものが見え隠れしていた回でもあったのかなと思いました。


人も立場も少しずつ少しずつ変わっていく。本編中で皆が限界ギリギリを突き詰めて、忙しさに駆けずり回っていましたが、逆にいつもより暇だったと感じていたのがコウちゃんで。今までは一人で大半を背負い限界に挑み続けていた彼女だけど、今回は主だった作業を部下に一任した上で、ADとしての新境地を開こうとしている。これはこれで違う意味での挑戦ですよね。
何より入社当初は抜群の才覚を持ちながら、主に対人関係に難ありで葛藤に苛まれ様々な苦労を背負い込むことになってしまったのが八神コウだった。でもそんな彼女も一番の理解者であるりんを介し、少しずつ皆と打ち解けて今の良好な関係性を築き上げるに至っている。そんなコウの歩んできた軌跡は、紅葉やツバメにとっての道標にもなり得るものじゃないかなと思うのです。
当時は自分のことで一杯一杯で、周りを気遣ったり見渡す心の余裕もなかった。でも分かってくれる人を支えとし、介することで時間をかけて少しずつ少しずつ変わっていくことは出来る。少し感傷に浸って己を顧みるコウちゃんの姿そのものが、今の新人たちに必要な一つのメッセージ性を有したものに映ったのであります。
どこか遠い所を見据えているようにも見えるコウの心中。その先に待っているものは…。終わりに向けて色々と動き始めて来ている物語。最後まで余すところなく堪能していきたい。
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