りゅうおうのおしごと! #12「最後の審判」今よりも先へ、より高みへ。



加速し続ける思考に広がる視野。最後の大一番に相応しく本編の大部分を割いて描かれた対局は熱いものがありました。盤上心理に長ける名人に呼応するように、自分との戦いに打ち克つことで、初めて盤を挟んで相対する等身大の名人の姿を捉え、彼とその先にあるものを見据える。今までの八一からの変質。内面的な成長を対局の中で視覚的に表現していたのも見事でした。
第三局で八一が激しく動揺する様を見せることになった千日手に至る手筋。それを、自らの意思で今一度行うことにしたのも、桂香さんが見せた一歩も引かない姿勢と彼の覚悟の表れだと思うし、そこに打ち歩詰めが絡むことまでを読み切ったことが、彼の進化の一端を盤上に表現したところでもあるのかなと思います。サブタイにもある「最後の審判」問題を、こういう形で物語の中に織り込んでいるのが巧みだなぁ。
等しく才ある者が揃うことで初めて至れる高み。最後の勝負の中に将棋の本質と言いますか。終わりなき道を歩む棋士の本懐。永遠のテーマみたいなものも盛り込み、更にルールの不備を突く構成にして、未だに現実のプロ棋士の間でも明確な答えが確定していない「最後の審判」を絡めていた今回の話は、将棋という題材に対する強いメッセージ性を帯びた内容だったと思います。
終わりはないし絶対的に正しい答えもない。本当に自分の進もうとする方向性が合っているのかも分からない。それでも歩みを止めずに歩き続ける。将棋と向き合い続ける棋士の覚悟。そういうものを改めて問うていたタイトル戦でもあったんじゃないかなと。最後のお花見シーンにおける八一の台詞が、もう全てを物語っているのだろう。
結果としてタイトル防衛を果たした八一でしたが、3連敗からの4連勝は現実の公式棋戦でもあり。というか今回のこの作中における竜王戦自体が、2008年に行われた当時の渡辺竜王と羽生名人の、初代永世竜王の座をかけた伝説の七番勝負をモチーフにしてると思われるので、現竜王の八一が防衛を果たすという結末は、落ち着くところに落ち着いたと言えるのかもしれない。
起死回生の一勝からの第七局までに至る過程や、防衛達成の瞬間というのも、可能であれば見たかった思いはあるのだが、そこは尺的な問題とかあれこれそれとかで難しい。原作ではその辺の詳細な描写もあるのかな。ともあれ残り時間の大切さが身に染みる回でもありました。
思考は加速しても大切な人や仲間たちの思いを、もう置き去りにするようなことはしない。また一つ高みに至ったが、健気に尽くしてくれるあいちゃんを筆頭に、これからも皆と共に棋士の道を歩んでいく。それがより良いものになることを願っている。何だかんだで良い最終回だった。



姉弟子がこれだけ健気に思っているのに!世界はJSこそが至高と言わんばかりに、全てあいちゃんへと収束していってしまうのだ。久しぶりに見たような気がするあいちゃんと姉弟子の掛け合い、もとい張り合いに一瞬の均衡を見つつ。でも、二人の出会いにして八一が初めてタイトルを取るキッカケとなった状況の再現までされては…。もうあいちゃん大勝利!の流れに行くのも無理からぬこと。悲しむべきは世の無常さよ。

将棋とロリ可愛い弟子の融合で気になり見始めた本作も早いもので、あっという間に終わりの時を迎えてしまった。当初期待していたあいちゃんの可愛さやラブコメディの要素を堪能しつつ。本作では現実の棋界であったことを割とそのままに取り入れてるところも多く、将棋界の実情とか将棋あるあるネタ。プロ棋士や女流棋士の置かれる立場、奨励会の研修会の仕組み等々。
あまり将棋に詳しくなくても楽しめるような丁寧さ。話作りがされていると感じるところもあって、将棋要素の方でも見せるところは見せてくれていたのかなと思う。一クールという期間で登場人物達の人間模様、バックボーンを確立するのと同時進行で、見栄えする対局を描くというのは難しかったと思うけど、物語的にも区切りの良いところまで進行して何より。
アニメはこれで一段落だけど、現実でも脅威の超新星にして新世代の藤井六段を筆頭に、今物凄く盛り上がっていて暫く話題に事欠かない日々は続きそうですね。故に更に熱く盛り上がる現実に呼応し、原作も熱く盛り上がり再び巡り会える日が来ることを願ってやまないのです。この先もだけどここまでの話も原作でどう描かれているのか気になってるので、いつか原作読みたいなぁ。
ともあれアニメはこれで一区切り。これで感想を締めさせて頂きたいと思いまする。スタッフの皆様、お疲れ様でした!
にほんブログ村
- 関連記事
-