さばげぶっ! #12「さらば友よ!サバゲ部最後の日!/サバゲ部より愛を込めて」やっぱり人間慣れないことはやるものじゃない。
その代償は己が身を持ってあがなうことになるのだ。




未知のウィルスに感染したモモカを国家権力から守り抜けということで、国家サバゲ部との全面抗争に発展した訳ですが、このエピソードにおいてはモモカの心情の変化の描き方が秀逸であった。病に侵され気弱になるなんてことは人間なら良くあることですが、感染直後のモモカは至っていつも通りであり、決死の覚悟で自分を守ろうとするさばげ部の仲間も当然のように利用する気満々。
また美煌達にしても本当に窮地に陥ったらモモカを売り渡すくらいのことはやるだろうという認識を、ここまで見てきた視聴者は持っていると思う。今までの話が話だから。しかし予想に反し次第に追いつめられても互いに仲間を裏切る様子は見せず、またこれまで関わりを持ったオールスターメンバーが、窮地に駆けつけモモカへの想いを語るところで「おやっ?」と思うわけです。
散々自分の良いように利用した面子に自分のことが好きだと言われようが、モモカなら最終的に使い捨てるだろうと思う一方で、視聴者視点からすると「最終回だからもしかして今までと違う流れを持ってくるのでは?」という疑念を抱かせられる構成になっている。




事実この時点のモモカが語った周囲への感謝の言葉は、モモカの偽らざる素直な気持ちであり、それも視聴者の疑念に拍車を掛ける作用を果たしている。ご丁寧に「これは妄想である」という玄田さんのナレが久しぶりにあったにも関わらず、最終回であること、最初はいつも通りながら状況の変化に合わせていつになくマジになって語っているモモカの姿を上手く利用することで、視聴者を引っ掛けてやろうという制作側の心意気のようのものを感じた。
実は大したことないウィルスだよというバカバカしくも軽いオチは、状況に流され普段とは明らかに異なる言動を繰り返したさばげ部メンバーのみならず、騙されそうになっていた視聴者も正気に戻す働きをしていたのではないだろうか。露世理亜の「
なに感動的な展開にしてんのよ。バッカじゃないの。恥ずかしい」という一言にこのエピソードの全てが集約されていたと言ってもいい。あのモモカすら狂わせるのだから謎の奇病よりも中二病が如何に恐ろしいものであるかは分かることであろう。
最終回という状況、いつもよりも長めの単体エピソードの時間配分。そしてモモカらしからぬ言動を上手く利用したエピソードであった。膨張や巨大化をやってのけたヤミーには触れないぞ!あれはそういうもんだ。




誕生日がクリスマスと同日で純粋に「誕生日」を祝ってもらったことがないうららを祝ってあげようというエピソード。先のウィルス騒動のみならずこれまでのうららの献身ぶりには、モモカも少なからず思うところはあるようで、己のプライドを守るという面もありつつ陣頭指揮を執る姿は新鮮。パーティ準備で一般常識からかけ離れた奇行を繰り広げることで改めて部員全員が変人であることを意識付けられる。周りに変人しかいないから結果的に常識人としての振る舞いを求められることになるモモカの姿も面白い。
このエピソードは終始モモカが周りに振り回される側に回っていることが面白く持ち前のゲスさも発揮していない。プレゼントとして己が身を差し出されることになったのも美煌のぶっ飛んだ発注のせいでモモカ自身は巻き込まれただけである。やはり人間は慣れないことをするものではなく、少しでも優しさなんてものを見せようとしたモモカは己の身を持ってその代償を支払うことになった。
そして強引に、ある意味自然な流れで風呂ノルマをねじ込み全話完走を果たした意地は見上げたもの。
凄いぞさばげぶっ!流石さばげぶっ!最後の最後までやりたいことがブレることはなかった。
どうでもいいかもしれないけど美煌が発注した熊を退治した猟師って7話で出てきた猟友会のあの猟師では駄目だったのだろうか。オールスター総出演だっただけにそこが妙に気になって仕方がなかった。

余談になりますが、ゲスい者達が主役の本作なのでそれに応じて相応に可哀想な目に遭うキャラが当然いるわけです。その中でも特に不憫で仕方がなかったのは、副会長にまで裏切られ売り飛ばされた石動やよい会長を置いて他にはいないだろう。最終回でほぼ全てのキャラが出てきたけど彼女だけは、さばげ部メンバーと一切接触することなく終わってしまったのだから。いつも真っ先にやられる麻耶以上に不憫な子。それが石動会長なのではないだろうか。
というわけであっという間の1クール。最後の最後までブレることなく全力で駆け抜けてくれました。最終回である今回に関してはモモカのゲスさが鳴りを潜めた感があったけどそれは今まで嫌というほど見せつけられてきましたからね。むしろ普段とは違うモモカの姿が見られて良かったのではないだろうか。それで物足りなさを感じてしまう方は自分と同じで「さばげぶっ!」中毒に完全にやられてしまっているんじゃないかな。
少女漫画の金字塔的雑誌の一つである『なかよし』連載作品とは思えない徹底されたゲスっぷり。しかし完全ギャグ路線であることでそれが嫌味にならず、モモカの周囲の人物も負けじと同調し、時にモモカ自身が手痛い目に遭うのでマイナスのイメージがなく純粋に面白い。
1話で受けた衝撃そのままに最後の最後まで笑わせてもらって本当に楽しかった。
こんな素晴らしい作品に出会わせてくれたアニメ制作スタッフの皆様には感謝してもしきれない。
いつかまたゲス☆かわガールズのみんなに会える日が来ると信じて感想を終わりにしたいと思う。
にほんブログ村
- 関連記事
-