結城友奈は勇者である #10「愛情の絆」終末に向けて既に動き出していたのは世界そのもの。
知ってしまった世界の真実は残酷。




大赦の隠していた真実を知り揺れに揺れていた勇者部の面々。その渦中に一人だけ加わらず別行動を取っていた東郷さんは、友奈たち以上に過酷な真実を知り打ちのめされることになっていた。前回の舞台裏で何が起こっていたのかを東郷さん視点で別角度から見ることで、この世界の全貌が見えてくるのと同時に、一番複雑な境遇に置かれていた彼女の生い立ちも見えてくる。
鷲尾須美であることを忘れ東郷美森として生きていくことになった彼女の成り立ち。勇者部のメンバーとして新たに手に入れた平穏な生活と心の安らぎ。そして再びその平穏が破壊され徐々に狂気に浸食されていく彼女の姿の描き方が秀逸であった。
前半パートが本当に穏やかで本来自分がこの作品に求めていたような日常描写だっただけに、後半パートとの落差にやられる。東郷さんの自殺に関する試行錯誤だけでも相当まいる展開なのに、より衝撃的な世界の真実をその直後に見せてくるのだから堪らない。勇者が負けて世界が破滅するのではなく既に世界は破滅し終末を迎えていた。負ければ僅かに残された四国の地も壊滅し滅ぶと言う意味では破滅に繋がるとも言えるけど。
こうなってしまうと最早誰が良いとか悪いとかの話ではなくなってくる。誰もがそうせざるを得なかった。ただそれだけのこと。神樹様はわずかに残った人類を護り、大赦はその役目を全うしていた。誰かがやらなければ唯一残された四国の地は失われ残された人類は絶滅する。大赦のやり口はともかくとして、そこには正しさも間違いもないのかもしれません。あるのは厳然たる世界の真実のみ。
しかし理屈は理解できても「正しい」だけでは割り切れないのもまた人の心。自分だけならともかく自分の大切な人たちまで騙し討ちにするような大赦のやり方に怒りを覚えるのも無理からぬこと。ましてや東郷さんの場合は覚えていなくても友人が酷い目に遭わされるのは二度目の体験。この先、これ以上症状が進行しないことが保障されるのならともかく、世界の真実と併せてバーテックスの正体と無限に再生する事実を知ってしまった。
故に先がなく救いのない世界に絶望し、ならば自分の手で終わらせると考える彼女の気持ちも分からんでもない。かなり過激な行動だとは思うが、東郷さんの過激さはこれまでの話でも至る所に見受けられた部分でもあるので。
このままジワジワと生き地獄を味わい行き着く先は供物としての成れの果て。乃木園子が辿った道を往くしかない。大好きで大切な仲間が苦しむ姿を見るくらいならいっそ自分の手で全てを終わらせる。追いつめられた東郷さんの取った行動は破滅への引き金となるのか。予想していた形とは若干異なるが勇者VS勇者の戦いが見られるかもしれないのでそこは期待。いや、来週どうなってしまうの本当…。
しかし世界の真実がこうなってしまっている以上、どうやっても救いの道を見出すことは出来ないですなぁ。
終着点をどこに持っていくのか。全てが終わるまでラストがどうなるか予想も付かないのう。
それこそ友奈が創世の神にでもならん限り、ハッピーエンドの結末はない気がしてきた。誰か救いを下さい。
にほんブログ村
- 関連記事
-
それが極まって限界超えたのが今回の行動というか。
今回にしても彼女の回想を見ていると、園子の発言を全て必要以上に悪く解釈してます。
親が自分を売ったように思ってしまいましたが、率先してそんなことしたわけもなく、ああいう状況だから勇者にする事を反対出来ない、大赦はせめてもの罪滅ぼしに家の方に金を出してるだけだし、親は勿論裏で泣いてます。
直接描写されてるのは前日譚の園子の両親だけですが、他の親だってそうでしょう。
勇者システムが現状あれだけの数しか作れなくて他にどうしようもないのは事実ですし、満開や精霊が組み込まれたのが親友であった三ノ輪銀が戦死したのを受けてであると憶えていれば、精霊が監視システムだとかは思わなかったでしょうし……
全て憶えて知っている園子との認識の差が大きいのですよね。
今の東郷さんは勇者部の面々が苦しみから解放されれば他の人間も一緒に滅びても構わないのでしょうけど、銀が可愛がっていた弟や裏で泣いてる両親も滅びて構わないとその後が思うかというと……
じゃあ、大赦が最初から全部真相話せば良かったの?と言われると、今回の東郷さん見てると人類の存亡を預かる指導者組織としてそんな危ない橋渡れないのも理解出来ますし……全部が正しかったとは思わないですが、そもそも悪気がなくても絶対正しい選択し続けるなんて無理ですしね。