天体のメソッド #13「はじまりのそらから」辛いことも悲しいことも笑っていればきっと乗り越えられる。
乃々香たちの強く純粋な願いが今一度奇跡を起こす。




5人全員が繋がり子供の頃のような関係に戻るのに一番のネックとなっていた汐音が、乃々香を始めとして他の3人にも積極的に働きかる姿が印象的。これまで何があっても挫けず折れなかった乃々香が立ち止まったことで、乃々香にとって如何にノエルの存在が大きかったのかを感じられる。そして再三再四に渡って乃々香を跳ね除けてきた汐音だからこそ、その言葉には重みがあるし差し伸べる手に説得力が伴う。
強い思いや他者との繋がりはそう簡単には消えないし、それが強ければ強いほど時に大きな原動力ともなり得る。乃々香にとってはノエルとの思い出もそうだし母親である花織との思い出もそうであろう。どちらも今の乃々香に大きな影響を及ぼし人間性を形成する大きな要因にもなっている。
何故乃々香と汐音だけが円盤とノエルのことを全て覚えていたのか。それもやはりノエルに対する思いの強さに他ならないのではないかと思うのです。幼少期にノエルと直接接触していたのが二人だけというのもあるだろう。乃々香が霧弥湖町に戻ってきた後に、特に強い影響を受けたのが二人だったというのもあるかもしれない。積み重ねてきたものが他の誰よりも多く、また今の二人を形成する上で根幹に関わる部分にノエルが多大に影響を与えていたということが大きいのではないかと。
そしてノエルにとって乃々香が特別な存在だった理由も、花織との回想シーンを見てようやく腑に落ちたような気がするのです。「みんな一緒にいつまでもニッコリ」と願った5人の中でも、あの時最もそれを強く願っていたのが、他でもない乃々香だったのではないかな。
花織の言葉が今の乃々香像を形成する上で多大な影響を与えていることは上述した通りだが、円盤を召喚したあの時は花織の療養や充実した病院施設を求めて引っ越す直前。これは状況からの推察に過ぎないけど、子供だった乃々香は徐々に衰弱してやせ細っていく母親の姿をその目で見続けていたはずだと思うのです。辛い時も苦しい時もニッコリ笑えば乗り越えられる。乃々香が願った「みんな」の中には母親も含まれていたのではないか。
今の乃々香を築く大元になっている母親の言葉。そこから生じた子供故に強く純粋な願い。「乃々香の願いを叶える約束を果たすためにいる」と言っていたノエルは、人一倍それを強く願った乃々香の思いの強さに呼応したからではないか。そんな風に思ったわけですよ。
どんなに辛く当たられても何で乃々香が毅然と強く在れたのか。その理由を実感しつつあった中で、再度円盤を召喚する流れがまた良かった。特に願った後は風景を上手く利用していて幻想的な雰囲気を作り出すのに一役買っていた印象。本当に今起こっていることは現実のものなのかそうでないのか。乃々香や汐音以外の登場人物もノエルとの繋がりを断片的に取り戻す様子を見せる中、しかし円盤が上空に現れたと思しき描写はない。
これがラストのノエル登場シーンに凄く効いていたと思うのです。ノエルの髪が映ったところで特殊ED。ノエルを探して星々を巡る乃々香たちと、それをチラチラ映りながら見守るノエル。ここまでだけなら乃々香たちが見たノエルは概念的な存在、幻とも取れる流れと構成。それだけに最後の対面がより一層感動的なものとして映ったのではないかなと思いました。
また汐音の帽子の使い方が本当にお見事だったと思います。いわば汐音の帽子は円盤の代替物として作用していたように映った。今作のタイトル「メソッド」と円盤の意味するところに関する個人的な考えは、11話の感想で触れた通り。みんなが願った後に空に舞い上がった帽子は、願いが成就することを示し、ひまわり群に舞い降りた帽子はノエルが円盤と切り離された一つの存在となったことを暗に示しているかのようにも映る。
ここに関しては様々な解釈が成り立ちそうなところですが、少なくとも自分の中ではこれで納得してしまった。もう目に見える形での円盤は必要ない。6人の心の中には既に確固たる絆や繋がりがあり信頼関係が結ばれている。円盤が再度上空に浮かばなかった理由をあれこれ妄想するのもまた一興。あくまで自分の妄想ですよ、妄想!
色々あったけど最後はみんなで一緒にニッコリとなって終わる。
誰もが幸せに笑える結末。これ以上言うことはない。最高の締めくくりじゃないか!

可愛らしいキャラクターや綺麗な背景が織りなす優しい街並みを舞台にしたのとは裏腹に、序盤から割と終盤までギスギスした重い空気を内包しつつ話が進行したのは、正直当初思っていた作風とは違っていてかなり意表を突かれた。特に乃々香と汐音の関係については、何をやってもすれ違い一歩進んだら二歩下がるを実践していてモヤモヤが募っていたのもまた事実。
しかしそれも全てラスト2話のこの展開のためと思えば、今では逆にそうなって良かったのかなと思えている。12話ラストで汐音が乃々香の前に現れた時の爽快感、そして今までの時間を取り戻すかのような今回の乃々香と汐音の仲睦まじい姿は堪らんかった。ノエルの行く末が気になりながらも二人のことばかり考えそうになっていたことは内緒。
ノエルが果たした役割もやっぱり大きくてそれは作中に留まらず現実でもそうなのかもしれない。見た目とは裏腹に結構重い業を背負っていたノエルですがそれを感じさせず乃々香たちを繋ぎ視聴者には癒しを与えてくれた。重い展開の中の清涼剤と言ったらアレかもしれないけど、彼女の存在がなければ途中で脱落した可能性もあり得たかもしれない。色々な意味でノエルには感謝したい。
分かったような分からないような妄想を延々と垂れ流しましたが、今作に関しては理屈云々を抜きにして、思うがまま感じたままを受け入れればそれでいいかと思う。超常的な内容が少なからず干渉していたことからも理屈ではなく感性に従うこともまた肝要かなとね。理屈ではなく感情で動くのまた人なのだと分かったようなことを言っちゃう。
1話の時点で背景が綺麗で素晴らしいなと感想に書いたけど、最終話でそれを活かした構成になってて感動。作中において背景から世界観や雰囲気を作り出すことが如何に大事かを改めて実感させられた気持ちで一杯です。スタッフの皆様、お疲れ様でした!
そして自分の妄想全開の感想に付き合って下さった皆様にも感謝です。
最後まで投げ出さずに完走することが出来て良かった…。
とフラグを立てたところで年内の個別感想記事を終了したいと思いまする。
■言及リンク
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乃々香を励まして積極的に動く汐音の姿は感慨深かったですね…
「今までの時間を取り戻すかのような」というのは、言い得て妙だと思います(^^)
言葉だけだと抽象的にも思えた「みんなニッコリ」ですが、文字通りの綺麗なラストに納得でした。これも演出の巧さですよね。
ノエルの存在が一番の癒しだったというのは大いに同感でして、最後にノエルの笑顔が見れて本当に良かったです(^^)
(欲を言えばエピローグ的にもう少しノエルの動いたり喋ったりを見たかった…!)