アイドルマスター シンデレラガールズ #22「The best place to see the stars.」秋の定例ライブが成功して全てが上手く回り始めるかと思いきや。
アイドル島村卯月に課せられた試練はここからが本番のようだ…。




失敗したことや辛いことも含めてそれぞれのメンバーが過去に経験したことを活かしていた回。特に各メンバーに対するプロデューサーの助言や気配り。裏方として本番に臨むアイドル達を支える未央の立ち回り等は、以前の失敗があったからこそ出来たことでもあり、彼らの成長と活躍が光る回でもあったと思います。
定例ライブもプロジェクトクロウネの面々を押し出しつつ、シンデレラプロジェクトの面々が上手い形でフォローすることで全体としての纏まりが出ていたし、懸念事項だったトライアドプリムスとニュージェネ間の関係も、主にニュージェネ側が自分たちのデビュー時の失敗した経験を活かし、背中を押すことで一体感のようなものが芽生え始めていた。
ソロで歌っていたアーニャにしてもライブの最中に思い浮かべていたのは、シンデレラプロジェクトの面々と成功させたサマーフェスでの思い出。プロジェクトは違えども、思いは同じということがここでも感じられるし、ライブに賭ける意気込み。現場で頑張るアイドル達の視点で見た時に、プロジェクト間での差はなく一体感を感じられる構成になっていたように映る。
それだけにただ一人取り残されてしまった終盤の卯月と、プロデューサーの唯一の対応ミスが際立つ。ニュージェネ解散騒動の時も卯月だけは前向きで後ろめたい発言はしなかったし、凛や未央と出会う前の養成所時代にしてもそれは変わらない。なまじその時の卯月を見ていたからこそ、彼女の抱える複雑な心境の変化を見逃してしまったのかもしれない。
養成所時代の卯月のことを振り返って見ると、今回の事態が如何に深刻なのかが改めて分かるのかなと。同期の仲間が次々と辞めていき一人残された中で、それでもデビューすることを諦めずに頑張り続けていたのが卯月でした。然るにこれまで卯月がどんな時でも頑張り続けて強く在れたのは、目指すべき目標が明確だったからではないかなと。
デビュー前はデビューそのものを。デビュー以降はユニットの結成にCDデビュー、ラジオの出演等々。この辺は前回のプロデューサーとの会話でも触れらていましたが、これまでの卯月は自分で動かずとも常に何らかの目標が他の誰かから提示されていた。ユニットを組んだことで凛や未央に付いていくだけで自然と前へ進む形が形成されたことも災いしたと言える。
仮にその二人が傍から居なくなったら、別々の道を歩み始めたらどうなるのか。それがここ数話を掛けて描かれていたことでもある。他の二人の行動があくまでニュージェネのためと分かっても心が晴れないのは、卯月自身が次に目指すべき場所、やりたいことを見出せていないからこそ。他の皆が進む中で卯月だけが階段の途中で立ち止まっている。
それが顕著に出たのがライブ終了後にシンデレラプロジェクトの面々が一堂に会したシーンかなと。プロデューサーから告げられた凛とアーニャの今後の動向。もう一方の活動を並行して行う事実。卯月の反応を見るに定例ライブが終われば凛はニュージェネに復帰し、全てが元通りという淡い期待を抱いていたようにも見える。しかしその期待もみんなの発言で儚く消えた。
新しくユニットを組んだ者、今までと異なる分野に挑戦して一定の成果を得た者。同じ裏方として参加しながらも明確な意図を持ち、どちらも大事と発言する未央。その全ての者達と卯月は事情が異なる。自分だけが何一つ前に進んでいない現実。これまで胸の内に抱えていた漠然とした不安。それがあの瞬間に確信に変わったのではないかなと。
今回卯月が凛と手を繋いだり自分の両手を合わせる描写が多かったのも、不安を払拭するために繋がりを求めていたのと同時に、進んでいく皆が持っている「何か」を掴もうとする心情が行動として表れたものなのかなと。しかし今の卯月はその「何か」も目標も見失い分からない。だからその手で何も掴めない。
目標があるから、目指すべき場所が明確であるからこそ人は強く在れるし頑張れる。到達地点も進む方向性も定まらなければ、そもそも何をどう頑張ったらいいのか分からない。卯月の現状はまさにこれなわけで。しまむー心の迷子です。頑張ることが心情であり、また心の拠り所としてきた卯月にとっては根底部分から瓦解すると言っても過言ではない。
だからもう笑えない。これまで出来ていたはずの笑い方も分からない。取り繕うことすら適わない。自分がアイドルとして在るための根底が揺らぎ、拠り所としてきた笑顔と頑張りだけでは、もう現状を打破することは叶わないと悟ってしまったから。そしてこれまで卯月を導いてくれたプロデューサーの発言が舞台を降りる引き金になるとは何たる皮肉か。
頑張っている人に頑張りましょうは禁句と言われたりしますけど、精神的に追いつめられていた卯月にプロデューサーが言ってしまった言葉はこれに当たるのかなと。「挽回しましょう」って「もっと頑張りましょう」とも取れてしまうし。あの状況での否定とも取れる発言は、アイドル島村卯月の否定と同義と言ってもいいのかもしれない。
これまで卯月を支えアイドル足らしめてきた「頑張ります」と「笑顔」の魔法。それでも駄目だから揺らいでいる。もうそれだけではこれ以上先へは進めない。だからこそ必要なのは自分に対する自信を持つこと。その自信となる根拠、拠り所とするべき「何か」を手にすること。そしてきっとそれは自分で目標を定めて進んだ先にしか掴むことが出来ないもの。
他の誰かに依ったものではなく自分自身で輝きを放つために必要なもの。それは誰かに与えられるようなものでは決してない。もう卯月に対して他の誰かが「目標」や「行き先」を提示する。プロデューサー、そして凛や未央が指し示すままに進んでいた今までの時間。童話のシンデレラで言えば魔法使いが与え導くことで生じる夢のような魔法の時間。それが終わる時が来たのかなと。
魔法が解けて一度は舞台から降りた卯月が、自分の意思で輝くために必要な目標と目指すべき場所を。凛や未央がそうしたように、そこへ至るためのガラスの靴を他でもない自分の力で手に入れて、シンデレラたちが集う舞台へ舞い戻る。一方的に頼るのではなく、時に頼り時に頼られるような対等な間柄。志を同じくする仲間と並び立てるような関係に。
ニュージェネ解散騒動の時に心の迷子になっていたプロデューサーが卯月にキッカケを貰って自らの足で動き出したように、今度はプロデューサーが心の迷子となった卯月にキッカケを与え、卯月が自分自身でやりたいことを見つけて歩き出すことが出来たなら、それ以上いうことはないのかなと。そうなる日が来ることを期待しているのです。



時計の針が12時を指し、しまむーの「笑顔」の魔法が遂に解けてしまう時が来てしまった…。というか今までプラス方面のカウントダウンとばかり思い込んでいたので、まさか卯月にかけられた魔法が解けて自ら階段を下りてしまうことを指し示すのに使われるとは夢にも思わず。
煌びやかなアイドルの衣装、華やかな舞台である撮影所。そこから学校の制服に着替えて帰途に着く。その姿はもうどこにでも居る普通の女子高校生。時計や衣装のような物の一つ一つを取って見ても、卯月の魔法が解けたことを暗に示すものとして機能しているのが凝っているなと。シンデレラの物語を踏襲している部分とも言えるのかな?
いやー、それにしても相変わらず試練が続きますなぁ。主人公だからこそ課せられた使命と言えるかもしれませんけど。ニュージェネとトライアドプリムスもいい感じで分かり合えて一安心とか途中で思ってたのに!最後にこれだよ!しかし無事にこの事態を乗り越えて、今一度最高の笑顔を見せてくれるって信じてる。卯月本人にも視聴者にも早く救いを下されー。


今回はどうしてもしまむー中心になったけど冒頭からライブシーンの連続で見どころの多い回だったのかなぁと思う。ただ如何せん自分はアニメでしか本作を知らないにわか勢なのでプロジェクトクロウネに選出されたメンバーのことをあまり語れなかったりもする。そういう意味では今回の内容の半分も楽しめていないのかもしれない。
ただ他のユニットの多くが止め画で次々と流されていく中で、凛たちのライブシーンは動かしてきたなぁと感動。他の作品をここで引き合いに出すのもどうかと思うけど、ライブパートではCGを使用する方が主流になりつつあるような気もする昨今。
にも関わらずの手描きにこだわりを感じます。これもアニマスから受け継がれている本作の醍醐味の一つと言えるのかもしれません。トライアドプリムスの三人が神々しく映る。特にしぶりんは良い意味で優遇されていたかなぁと。ライブシーンにしてもプロデューサーとの以心伝心っぷりにしても。他の子にはないもん(笑)
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