アイドルマスター シンデレラガールズ #23「Glass Slippers.」色々と抱え込んでいた卯月が胸の内を一つ一つ吐露していく姿にグッとくる。
卯月だけでなく凛と未央もここから揃って新たな一歩を踏み出す。




方向性を見失ったときに原点に立ち返るのは悪いことではない。自分を今一度見つめ直すことで何かが見えてくることもあるだろう。しかし今の卯月が冷静なのかと言えばそうではなく、前向きに何かを掴もうと養成所に帰ってきたわけではない。他に成す術がなくなりそうせざるを得なかったからこその行動。皆のように前に進むのではなく、下がることで踏みとどまろうとした。
養成所は卯月にとって最後の心の拠り所。原点でもあるけれど、言い換えるとこれよりも更に遡ることは叶わない。故にこれ以上の逃げ場はない。目標が見つからないから進むことも適わず、これ以上後ろに下がれないから留まるしかない。プロデューサーの来訪に困惑し、凛と未央を遠ざけようとするのもそのためで。これ以上後ろはないし戻れない。
その卯月の心境を示すのが物語開始当初と今回の反応の差なのかなと思う。デビュー前はプロデューサーの来訪を心待ちにし、来るたびに状況の進展と自分のやるべきことを聞いていた。デビューという絶対の目標があるからこそ、卯月の心と視線は常に前を向いていた。頑張ることで一歩ずつではあっても前へと進む確かな手応えがあったのだ。しかし今は当時と全てが真逆。
当時と同じように頑張っているのに何一つ進展せず好転することのない現状。焦りが不安へと転じ蓄積されても吐き出すことも適わない。自分の中で新たな目標を見つけ凛と未央に並ばなければ、横に立てないと卯月が考えている以上はそれも出来ない。しかし方向性も目標も定まらない以上は、何をどう頑張ったところで空転するだけなのだ。
全てはアイドルとして自分を支える拠り所を持たぬが故のこと。他のアイドルより突出したものを持っているのなら。突出していなくても自分が自信を持てると断言できる何かがあるのなら。それを指針として方向性と目標を定めることも出来るが、それがなく何も見出せないからこその心の迷子。これ以上進むことも戻ることも出来ない。
暗中模索なのですよね。凛や未央に対しても決して取り繕おうとしていたのではなく、他でもない卯月自身がもう自分のことが分からなくなっている。抱え込んでいたけど自分でも分からないから吐き出すことも出来ず、積りに積もった様々な感情が卯月を心の迷路へといざなったと言ってもいいのかもしれない。
そして身動きが出来なくなりギリギリの境界線を更に後ろに越えようとした卯月を凛が繋ぎ止め、連れ出したところが本当に堪らなかった。卯月と凛にとっての始まりの場所で、卯月を見て一歩を踏み出す決意を固めた凛が今度は卯月に道を示す。卯月に正面を見据えさせて真っ向から歩み寄る。後ろで見守る未央と歩み寄る凛に挟まれた卯月は向き合う他ない。
そこで初めて言葉にできた本音。零すことが出来た不安の言葉。どんな時でも口にせず溜めに溜めて堪えて来たからこそ「怖いよ」というたった一言に込められた万感の思いが重く響く。アイドルとしての自分の強み。自信の拠り所となる根拠。誰にでも出来る「笑顔」と卯月が考えてしまっていた以上、自分の判断でそれを拠り所とすることは出来ない。
自ら客観的に判断することが出来ない表情ならば尚更だ。だからこそ欲しかったのは、いつも笑顔を強みと言ってくれるプロデューサー以外の人からの肯定の言葉だったのかなと。卯月の笑顔がキッカケになった凛がいる。いつも笑って待っていてくれる卯月の笑顔を支えに頑張れた未央がいる。誰にでも出来ることではなく、卯月だけが持つ「特別」な強み。卯月にとってのガラスの靴。
でもいつだって笑っていられる訳じゃない。人間だから悲しければ落ち込むし、辛いことがあれば傷つく。見えているようで見えていなかったのは凛や未央も同じで。包み隠さず全てをぶつけ合うことで、それに気が付くことが出来た。だから卯月だけではなくニュージェネも、ここから先へ一歩を踏み出すことが出来る。
また全てを打ち明け合った後に後ろから卯月を抱きすくめ、凛の手を引っ張り再度歩み寄る未央の立ち回りが良かった。ここはそれぞれの今の立場を反映した立ち位置になっていたのかなと。並び立ってからじゃなくてもいいと。置いていくことなんてないんだと。それを暗に伝える形にもなっていたのかなと感じた次第。本当に堪りませんな!
序盤の頃から積み上げて、特に後半クールに入ってから丁寧に積み上げてきたニュージェネ関連の布石を綺麗に回収し、特に「個」が見えにくかったアイドル島村卯月の個に関して、実に様々な角度から切り込んだのではないかと。ここまで辛いことも多かったけど乗り越えただけの価値があった。この先がどうなるのか本当に楽しみです。

これで全てが解決したわけではないのかもしれない。しかし全てが停滞していた空間となっていた養成所という「箱庭」に籠っていた卯月が、自らの意思で外へと一歩を踏み出して、一度は降りかけた舞台へ再び登ろうとする決意を固めた。立ち止まったままでいた今までとは異なり、方向性はともかくとして留まっていた場から動き始めたのだ。
今すぐ自分の「笑顔」に対して絶対の自信を持つことは難しいかもしれない。こればかりは時間を掛けて様々な経験を通して次第に深めていき自身の中に確立するしかないものだから。でも長い時間苦しんだ。悲しいことも沢山あった。でもそれらを乗り越えて前を、そして上を見据えることが出来たならきっと大丈夫。
いつか心の底から自分の笑顔に自信を持ち、ステージ上で最高の「笑顔」を振りまき光り輝くしまむーが見られるって信じてる。もう悲しく苦しい時間は終わりだ、終わってくれ!残り話数もあと僅か。ここからはもう立ち止まる余裕すらない程に突っ走ってくれるって期待してる!
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